和本の虫退治

●今日の朝日新聞、夕刊に、国立国会図書館の和本の虫食い防止対策の記事が出ていた。大型保温テントに66箱のダンボールに詰められた和本を入れて密閉し、濃度60%の二酸化炭素を流し込む。これで2週間、14日間燻蒸するという。2週間は長いが、CO2は安価ゆえ、経費節約になる。国会図書館は、このノウハウを各図書館に提供しているという。結構な事だと思う。

●和本の虫の被害は、一般の方には、余り興味は無いと思うが、私達、古典研究に関連している者には、貴重な文化財が、失われることもあり、切実な問題である。私などは、古書店から古書を購入した時は、日陰で乾燥し、紙魚が居ないか調べて、ナフタリンペーパーを挿し入れて、保管している。

●昭和61年、桜山文庫昭和女子大学で一括購入した時は、到着した和本を、まず、使用されていない、何も入っていない部屋(何と、それは館長室だった)に積み上げて燻蒸した。燻蒸は、専門の業者、関東港業に依頼した。和本全体を大きなビニールテントで覆って密閉し、殺虫・殺卵には臭化メチル、殺菌にはエキボンという薬品を注入する。これで48時間経過後に開封する。テントの中には、サンプルの虫や卵を入れて、効果を確認していた。図書館では数日後に仮書架へ移動し、やがて整理して、貴重書室へ移動させた。経費はかなりかかったと思うが、私は知らない。

●とにかく、このようにして、文化財・古書は処理されて、以後は室温・湿度、火災に留意された環境で管理される。

朝日新聞、2010年8月17日夕刊


■関東港業の燻蒸の様子