『田夫物語』 男色・女色 優劣論

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田夫物語 でんぶものがたり

仮名草子。一冊。作者未詳。寛永一四年(1637)〜承応元年(1652)頃刊。
問答形式で男色女色の優劣を論じた作品。
夏の暑い日、主人公は友人二、三人と連れ立って川辺に出た。歩きながら、1人が、当時はやりの若衆好みを非難すると、これを華著者に聞き咎められ口論となる。主人公は双方をなだめ、互いに論じ合って優劣を決めようと提案する。田夫者(いなか人、女色支持者)と華奢者(風流人、男色支持者)は、お互いに、和漢の例話や仏教・儒教の実例を援用して、相手を難じ、自分の立場の優位を主張するが、最後に女色方が勝つ。
当時流行していた男色を採り上げたもので、男色女色優劣論の先駆をなす作品。
複製は『古典文庫 仮名草子・男色物』、翻刻は『国文学研究』(昭25年11月)『日本古典文学全集 仮名草子集・浮世草子集』。
(文献)岸得蔵「『田夫物語』考」(『仮名草子西鶴』成文堂、昭49)*円山博宣「『田夫物語』に於ける形式考(1・2)」(『二松学舎大学人文論叢』昭59・3、10)   (深沢秋男)
 〔『日本古典文学大事典』平成10年6月10日、明治書院発行〕
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●実は、今、『仮名草子集成』第52巻に収録する『田夫物語』のサブ校正を進めている。古典の校訂は、実にむつかしい。様々な知識が無ければ、なかなか正解に辿りつけない。知識が蓄積された頃には老人となっている。私は、仮名草子関係の全集の担当があと2冊残っている。困ったものである。