如儡子 と 私

●だいぶ前の事になるが、如儡子・斎藤親盛の御子孫、第13代豪盛氏・第14代康盛氏と、長井市の“はぎ苑”で1夕を共にしたことがある。夕食後は、併設された、卯の花温泉、源泉100%の“はぎ乃湯”に3人で浸かりながら、話題は尽きることが無かった。斎藤家、初代光盛から2代広盛、3代親盛・・・、そうして、現在の斎藤金型製作所まで・・・。

●そして、あろうことか、康盛氏は、私の背中を流してくれた。驚いた。如儡子の後裔に、背中を流して貰えるとは、夢のまた夢である。世が世であれば、最上57万石の重臣と、甲斐の山猿ごときが同席することさえ許されない。340年後のことではあるが、また、封建武家社会から民主的な近代社会へ転換した現在のことではあるが、人の世の変遷に感慨は深い。

●また、席上、私が昭和女子大学で行った最終講義の時の参考資料を、差し上げたところ、お二人は、隅から隅まで御覧になっておられたが、豪盛氏は、深沢先生、先生があの世へ行ったなら、如儡子は、きっと、真っ先に、先生の所に駆けつけて来るでしょう、と申された。

●私の、最終講義の内容は、

■はじめに
 ★仮名草子〔かなぞうし〕(『日本古典籍書誌学辞典』岩波書店
 ★仮名草子の範囲と分類(早稲田大学蔵資料影印叢書、第39巻、『仮名草子集』月報43)
1、卒業論文のテーマ
2、作品の書写
3、作品の諸本調査
4、作品研究
5、如儡子という人物
6、如儡子の伝記研究
7、伝記研究の方法
8、酒田の調査(如儡子出生の地)
9、二本松の調査(如儡子終焉の地)
■おわりに

こんなものであった。果たして、私があの世へ行った時、如儡子は、真っ先に、私の所に駆けつけてくれるであろうか。
■『可笑記寛永19年版11行本 桜山文庫



■無刊記本 長澤規矩也先生蔵





■万治2年版絵入本 横山重先生蔵