永井一彰氏の労作 『月並発句合の研究』刊行

●永井一彰氏の労作『月並発句合の研究』が刊行された(2013年5月20日、笠間書院発行、A5判、612頁、定価15000円+税)。門外漢の私であるが、まず、ひとわたり拝見した。月並発句合が研究され始めたのは、昭和50年の尾形仂氏の論文からであるという。まだ、研究暦の浅い未開拓の分野であろう。著者の永井氏は昭和55年からこの分野の研究を重ねられ、その集成として、本書をまとめられた。元禄、宝暦、安永、天明、各時代の作品を整理・分析・研究され、続いて、几董判月並発句合の詳細な検討をされる。私は、この章の各論が、大変勉強になった。
●①題、②場・所、③取り合せ・かけ合せ、④中七文字・上五・座句、⑤真率・・・。これらは几董の評語の中から選んだもの。これらの評語を通して、その指導原理・俳諧観などを考察されたもので、大変な労作だと思う。翻刻編、第1章の「几董判月並発句合」では、詳細な頭注を付けている。これが、各論の解説と共に、教えられるところがある。労作に感謝する。
●本書を拝読して、まず感激したのは、「はじめに」で、「殆どは今回の書き下ろしで、一部は旧稿と重なるところもあるが、それらについては新しい資料も加え稿を改めたつもりである。」とあることである。この種の研究論集では、よく、初出一覧として、雑誌発表の論文を集めて一書にする例が多い。本書は、それらとは、一線を画するもので、その点でも心を動かされた。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■『月並発句合の研究』

■『天明四年甲辰発句巻』