中村雄昂氏遺稿 啄木評伝

●昨日、さいとうクリニックの帰りに、美味しいコーヒー〔樹屋〕へ寄ったら、マスターから、思わぬプレゼントをもらった。月刊『百味』5月号、これは、中村雄昂(正しくは「日」の下に「卭」)氏が長年編集されていた味覚の月刊誌で、中村氏が急逝された後は、高橋恭子氏が引継ぎ、見事に継続している。

●『百味』2012年5月号には、佐瀬朗氏の「〔評伝〕天才啄木――粒粒辛苦の東京漂流〈その13〉最終回」が掲載されている。この筆者・佐瀬朗は中村雄昂氏のペンネームである。中村氏遺稿を高橋氏が整理検討して13回まで掲載された。未完ではあるが、中村氏は喜んでいるだろう。私は毎号、楽しく読ませてもらった。

●「〔評伝〕天才啄木〈その13〉最終回」には与謝野鉄幹と晶子の雑誌『明星』の終刊・100号の状況が描写されている。発行部数が減少し、毎月30円〜50円の赤字が続き、ついに終刊になったという。この終刊号の発送を啄木も手伝っている。明治の詩人たちの生き方の1コマが活写されている。

●中村氏・佐瀬朗氏の「〔評伝〕天才啄木――粒粒辛苦の東京漂流」が未完に終ったことは、惜しいことであった。私は、中村氏から、1度、お手紙を頂いたことがある。私が、酒田出身の斎藤親盛を研究していることから、酒田の料理の寸評を下さった。温か味のある万年筆の文字だった。

■月刊『百味』1012年5月号