『徳川実紀』の現代語訳

吉川弘文館から、『徳川実紀』の現代語訳が刊行開始された。『家康公伝 全5巻』『秀忠公伝 全9巻』『家光公伝 全19巻』の予定だという。『家康公伝』の第1巻は、2010年12月10日に発行された。2200円+税。

■弘治2年(1556)の書き出しは、次の通りである。
原本
「竹千代君御とし十五にて今川治部大輔義元がもとにおはしまし御首服加へたまふ。義元加冠をつかうまつる。関口刑部少輔親永、(一本義広に作る)理髪し奉る。……」
現代語訳
「竹千代君(家康)が十五歳のとき、今川治部大輔義元のもとで元服なさった。義元が冠をかぶせ、関口刑部少輔親永〔一説には義広とする〕が理髪をした。……」

●このように、易しい現代語に置き換えれば、現在の多くの読者に受け入れられるだろう。江戸時代の日本の政治の中心的存在であった、徳川家と幕臣、諸大名の動静を、年・月・日を追って記された、この文献は、天保期に編纂されたものであるとは言え、大いに参考になる。

●私は、この史料に、大学3年の時に出合った。卒論に仮名草子の『可笑記』を選択したが、徳川家の動静と関係無しには考えられなかった。大学の図書館で、毎日・毎日、この『徳川実紀』を借り出すので、司書の方が、大学院の図書室へ行けば開架で見られると教えてくれて、以後は、そちらで閲覧させてもらった。仮名草子の論文に、この『徳川実紀』や『徳川禁令考』を利用したのは、私が早い方であったと思う。50年ほど前のことであり、今、現代語訳を見て、感慨は深い。

■『家康公伝 1』

■『徳川実紀』原本 弘治2年(1556)の書き出し 

■現代語訳 弘治2年(1556)の書き出し