『省艸印譜』 のこと

●平成4年、池袋土曜会が母体となって、「省艸印譜刊行会」を設立した。冨樫省艸氏という篆刻家に出会って30年余、冨樫氏の篆刻の印影を拝見する度に感激し、これを後世に伝えよう、そういうことになった。10数名の会員の総意である。
●私は、専攻が仮名草子で、原本調査を長年続けていると、自然と、多くの蔵書印に出会う。そこから、印譜にも興味がわいてきて、冨樫氏の篆刻作品に感激し、尊敬し、親しくお付き合いさせて頂くこととなった。
●『省艸印譜』は、平成4年12月12日発行、限定30部、144点の印影を収録した。和装本で、匡郭も柱も全て木版、ただし、印は、全て手で押した。しかし、印文は、全て活版印刷で、明文印刷に依頼した。こんな贅沢な本は、そう、ないと思う。
●30部の寄贈先は、国会図書館、都立中央、芸大、武蔵野美大多摩美大、東大、慶應、早稲田、法政、明治、立教、昭和女子などの大学図書館に絞った。私の手許にあるのは、第伍号である。
●冨樫省艸氏は、山形県酒田市の出身。大正14年6月8日生まれ。第二次世界大戦の時、シベリアに抑留され、復員後は、塗料会社に勤めながら、篆刻に取り組んだ。冨樫氏は、この印譜集に1文を寄せている。
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  石の美に魅せられて
 私が石にとり憑かれたのは、もう四十年も前になる。終戦直後の浅草、毎日、これといって為すこともなく、ぶらっと街の骨董屋巡りをするのが日課だった。そんな或る日、ふと眼に止ったのが、掛物の右上や左下に、朱で押された印であった。店主に無理をいって、掛物・色紙の全てを見せて貰った。一つ一つの印影の様々な表情に、我を忘れて見とれていた。
 「これは中国の印だよ」店主の差し出した一つの石。みごとに磨きあげられた石の美しさと、その気品、私は言葉も出なかった。四十年経った今も、その衝撃は少しも薄れていない。
 以後、石を求め、石を磨き、そして刻し続けてきた。ただ、それだけのことである。それにしても、数からすれば、随分の量になる。そんな中から、自分の気に入った幾つかを選んだのが、この印譜集である。
 最後に、この印譜集の刊行を提案、推進してくれた、土曜会の面々に心からの謝意を表す。
   平成四年十月吉日          冨樫省艸

  我が友
 故 大久保力雄大兄に捧ぐ
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都立中央図書館資料詳細タイトル  
省艸印譜  セイソウ インプ
著者  富樫 省艸 /刻, [富樫省艸 /編]
著者名典拠番号 110001879190000 , 110001879198000
出版地   所沢
出版者  省艸印譜刊行会
出版年  1992
ページ数  32丁
大きさ 26cm
形態注記  和装
累積注記  ケース入 限定30部
特定事項に属さない注記  限定版
出版等に関する注記   帙入
装丁  和装
本体価格  頒価不明
分類:NDC8版  739
分類:NDC6A版  739.8
分類:NDC9版  739
■『省艸印譜』




■印影の1部