谷川俊太郎と谷川徹三

●今月の『新潮45』は、「出版文化こそ国の根幹である」という特集なので興味があって読んだ。電子書籍の波に大揺れの今、掲載された諸説は、現在の出版界の問題点を指摘していて、大いに参考になった。アマゾンなどという虚業と、実業の出版界の今後の展開に関心がある。
藤原正彦氏は「「読書と教養」が国民の大局観を育てる」の中で、

「本屋というのは、そこにあるだけで、一個の知の拠点なのです。そこに入って本を1冊購入するだけで、あるいはたとえ買わなかったとしても、本屋を目にしただけで、教養というもの、本というものがここに揃っているんだと認識し、日常に流されている自分を反省させられている。これが重要なのです。」

と書いている。私なども、うなずけることである。
●この号に載っている、谷川俊太郎の談は、実に面白かった。私は、法政大学で、谷川徹三先生の芸術学を受講していたので、息子の俊太郎氏には興味があった。あの大哲学者の子供が、どうして高卒なのか、疑問でもあり、それを許した父親の姿勢に感心してもいた。

「僕が「大学に行きたくない」と言ったら、「大学へ行くと語学を覚えるのと友達ができるのはいい」と言っていました。・・・僕と父の関係は一貫して「君子の交わりは淡き水のごとし」でした。」

●『二十億光年の孤独』の出版の経緯も面白い。谷川家に出入りしていた雲井書店が出す事になったが、途中で倒産してしまう。父親は、この本の紙型を買い取って、創元社に持ち込んで出版してもらったという。やはり、子を思う父だった。
●子は、父親の法政大学の月給で生活していたという。親のすねをかじって育ったからか、「詩は受注生産」とも言っている。とにかく魅力的な親子関係であり、現代詩人の生き方である。
■『新潮45』2月号

谷川徹三  ネットより

谷川俊太郎  『新潮45』より