人の口は善悪の門戸なる事

●経営コラムニストが、『可笑記』の言葉を引用していた。
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第48講 「言志四録その48」
禍は口より出で、病は口より入る。

【意味】
禍は口から出て、病は口から入る。


【解説】
口には、言葉を外に発する機能と食物を内に取り込む機能の2つがあり、
誰もが大変お世話になっている身体機関の一部です。

このように大切な身体の機関でありながら、有り難さよりも「口は災いのもと」に代表されるように、
古来口害に関する戒めの言葉が圧倒的に多いのも特徴です。
口への有り難さに言及する名言が少ないのは残念ですが、
人類の感謝下手がこのようなところにも表れているのではと思います。


江戸時代の仮名草子作者の如儡子(にょらいし)に『可笑記(かしょうき)』という書物があります。
彼はその中で「人の口は、一切善悪の出入りする門戸也」 と述べ、次のような分析をしています。

  (1)口から出る善悪は、金言や詩歌を善とし、噂や嘘を悪とする。
  (2)口から入る善悪は、薬や空腹時の食物を善と し、暴飲過食を悪とする。


この分析からすれば、口に入る食べ物は直接身体に関係しますから、本能的に自衛策が講じられます。
下痢やおう吐などはその例です。また仮に悪い物を食べた としても自己責任の範囲ということになります。
一方、口から出る言葉は聞く相手が居りますから、失言に対する戒めが必要です。
しかし言葉の持つ長所を考えるならば、如儡子のいう「口から出る善」も大切にしたいものです。
前述のように失言の戒め名言が圧倒的に多いことを考えると、人間学を学ぶ我々自身が、積極的に格調高い
名言を学び世間に語り伝え、「口から出る善」の量を多くし、家族・職場・社会のレベルを向上させたいものです。
私は「100万人の心の緑化作戦」というボランティア運動を提唱していますが、
この運動を如儡子の言葉を借用して表現すれば、「生き方行動から出る善」運動ともいえます。  【以下略】
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杉山巌海

経営コラムニスト紹介杉山 巌海氏 (学)名古屋大原学園 学園長・税理士
銀行勤務を経た後、大原学園グループの創始者青木靖明氏の薫陶を受け、税理士等10数種類の資格を取得。現在、学校法人名古屋大原学園のTOPとして大原簿記情報医療専門学校、大原法律公務員専門学校、大原トラベル・ホテル・ブライダル専門学校…など11校を経営。
経営の傍ら、30年以上にわたり禅宗儒教道教などをもとに、東洋思想からみた人間学経営学を研究、多くの先人の教えを自らの事業経営に活かす。
現在、「100万人の心の緑化作戦」を提唱し、名古屋・浜松・静岡の3地区で20年以上にわたり、開催回数350回、参加延人数50,000人にのぼる古典を通した「人間学読書会」を主宰。
著書に「心の基礎力1宋名臣言行録貞観政要論語編」、「心の基礎力2言志四録編」、「心の基礎力3老子菜根譚三国志編」、「名句名言の味わい方・活かし方」。経営CDシリーズとして、東洋思想に学ぶ社長の行動哲理と人間学シリーズ最新刊「社長の大義と実践経営」をはじめ、「菜根譚CD」「帝王学CD」「言志四録CD」「韓非子CD」「論語CD」「老子CD」。
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●これは、『可笑記』巻2の26段に出ている。
「▲むかしさる人の云るは、されば、人の口は一切善悪の出で入りする門戸也。かるがゆへに、よき番衆をすゑをきて、出入りするもの共を改めらるべし。其のいはれは、云まじき人のうはさを、あざけり、へうりなどを云て、身命をあやまつ、是は口のうちより外へいづるものども也。
又、くうまじき物をくゐ、のむまじき物をのみ過して、病を生じ、身命をあやまつ、是は口の外より内へいる、いたづらもの共也。」 【以下略】
●『可笑記』の作者は、日本や中国の文献をたくさん読んで、自分の文章を書くときに、自由自在に利用している。だから、物事の眼目を上手く指摘し、文章化しているのである。
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■杉山巌海氏

■『可笑記』巻2の26段