近松門左衛門の 『狗張子』

●今、林羅山の『棠陰比事加鈔』と、浅井了意の『狗張子』の校正を進めている。『棠陰比事加鈔』は漢文で、大変シンドイ作業である。それに比べて、了意の『狗張子』は、やさしく、読みやすく、面白い。仮名草子時代の読者は、このような読み物で、楽しんだり、学んだりしたのだろう。
●『狗張子』は、元禄5年(1692)に京都で出版された。後年、嘉永4年(1851)、平安書肆、正宝堂の序言をもつ版が出されている。この本は、近松信盛著、菱川師宣画、としている。
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信盛が博識は世のしる処にして、此書たるや永禄天正の頃なる朝野の奇事其実を評論し、則、文禄年間の印本にて、其頃に盛に行はれしが、いつか埋木となりて、好事のをしむ処なりしを、こたび、幸に桜木を得たれば、いにしへしのぶ諸君子の伽にもなれかしと、ふたたび、今世に弘む。其文意の絶妙なること、画図の古体なるさま、巻をひらきて其いにしへを見るべしと。
嘉永四年亥の春 平安書肆 正宝堂誌
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●この作品の作者となっている近松門左衛門も、絵師となっている菱川師宣も、当人は、全くあずかり知らぬこと故、驚いているだろう。
嘉永四年亥の春 平安書肆 正宝堂誌 の 『狗張子』
 早稲田大学図書館所蔵本