市古夏生氏の 『元禄・正徳 板元別出版書総覧』 刊行

●市古夏生氏の労作『元禄・正徳 板元別出版書総覧』が刊行された(2014年11月29日、勉誠出版発行)。A5判、824頁の大冊である。本書は、『増益書籍目録』の、元禄9年河内屋利兵衛板・6種、元禄11年丸屋源兵衛板・2種、宝永3年丸屋源兵衛板・4種、宝永6年丸屋源兵衛板・2種、正徳5年丸屋源兵衛板・1種、の、計15種の書籍目録に収録されている書籍を、板元別に再編して、収録したものである。市古氏は「序言」で、次の如く述べられている。
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「前略
 『増益書籍目録』には俳書は僅かしか掲載されておらず、また浮世草子の中に未掲載の書があるなど、必ずしも全部の出版書が網羅されているわけではないが、七千タイトル余の書名があげられており、元禄・正徳期(1688〜1715)に流通していた出版書の大部分と考えてよかろう。つまり出版物の総体をしることが可能ということである。『増益書籍目録』を板元別に改編した本書は、京都の板元は固有名詞が付され、大坂や江戸は土地の名称のみの場合も多いけれど、

①それぞれの板元がどのような書物を蔵板しているのか、
②板元の蔵板書数から経営規模がどの程度なのか、
③儒書、医書、仮名書、仏書のどのような分野を多く蔵板しているのか、
④板元によって書物の値段付け、値上げに特徴があるのか、
⑤板元は特定の著者との結びつきがあるのか、
⑥板権の移動はどのようになっているのか、

などの諸点を明瞭化する手助けになるはずである。
後略」
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●私も、仮名草子を中心に、近世文学を研究するために、近世の出版状況に関しては、少なからず関心も持ち、調査・研究もしてきた。従って、当時の書籍目録も利用してきたが、今回の市古氏の大著を目の前にして、近世の出版文化に関する研究の進化、進展に対して、感謝と感動をせずにいられない。
●市古氏の労作は、今後の近世出版文化の研究に対して、大きな刺激と進歩をもたらすものだと思う。膨大な資料をベースにして、この大冊をまとめ上げた市古氏の情熱に対して、心からの敬意をささげる。
★本書の詳細 →http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm
■『元禄・正徳 板元別出版書総覧』