ペン先 の書き味

●今日の朝日新聞の「凄腕つとめにん」は、ゼブラ 野木工場技術部顧問の山鹿功司氏を取り上げている。ゼブラでペン先の改良に取り組んでいる。漫画家の使うペン先は、現在、国内で2社のみだという。ゼブラはその1社である。ゼブラの創業者・石川徳松が1897年に、国内で初めて製造したという。
●山鹿功司氏は、1度途絶えた、ペン先の書き味の復活に取り組んだ。4年間で1000人の漫画家に書き味を確認してもらって、その線の太さ、書き味のよさを探究したという。凄い情熱だと思う。
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 インクをつけて絵や文字を描くペン先(つけペン)は、ボールペンや万年筆にとって代わられ、今のお得意先はもっぱら漫画家だ。生産は国内2社に限られる。その1社のゼブラで、ペン先の品質を管理して5年目になる。
 野木工場(栃木県野木町)の一角にある「ペン先課」には、自身も含めて職人が6人いる。漫画家がキャラクターの輪郭を描くのに使う「Gペン」など3種類はほぼ手づくり。できあがったペン先を顕微鏡でのぞき、線が太すぎないか、インクがたれすぎないか、目を光らせる。
 入社以来、ボールペンや蛍光ペンの開発にかかわった。だが、定年を迎えた2010年、工場長から「ペン先の品質管理をやってくれ」と頼まれた。
 ペン先は創業者・石川徳松が1897年、国内で初めて製造した「ゼブラ発祥の商品」だ。だが、10年ほど前、漫画業界でちょっとした騒ぎが起きた。「ゼブラのペン先の品質が落ちた」との声が上がったのだ。
 金型を自ら直してつくりあげていた熟練の職人が、定年退職したのが原因だった。会社はプレス機の更新などで対応したが、不良品が続出した。漫画家がペンを置き、パソコンで描くきっかけになった、とまで言われた。
 工場の技術顧問としての出勤は週3日。第二の人生のスタートに際し、「まずユーザーの声を聞かなければ」。「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)を始め、漫画雑誌の編集部に頼んで漫画家25人を紹介してもらい、ペン先への要望を聞いた。
 最も多かった答えは「なめらかに描きたい」だった。調べると、ペン先にできた「バリ」と呼ばれる小さな突起が紙にひっかかり、書き味を損ねていた。そこで工程を増やし、バリをきれいに取り除くことにした。
 線のばらつきをなくすため、漫画家が好む線の太さを測定。「細い線」の基準を太さ0.285ミリと決め、改良を重ねた。試作品を漫画家に使ってもらうと「従来品よりもいい」との声が8割に上った。アマチュアの漫画家も含め、試し書きをしてもらった人は軽く千人を超える。13年、改良品の「Gペン」を発売すると、右肩下がりだったペン先部門の売り上げが反転した。
 要望には「耐久性を高めてほしい」という声も多かった。「金属のチタンでめっきすれば強度が増すのでは」と、ひらめいた。試してみると、1本のペン先で描ける線の長さが従来品の3.7倍、75メートルまで伸びた。
 今年8月、「チタンGペンプロ」として発売。「ペン先で100年ぶりの新商品」と言われた。価格は従来品の3倍もする1本250円だが、事前の予想を3割上回る売れ行きとなった。
 「デジタルで漫画を描くようになった人も、本当は自分の手で描きたいはず。そういう人が戻ってこられるような品ぞろえにするのが夢」と語る。
 「タッチ」のあだち充さんら一線の漫画家や編集者が工場に足を運び、職人を励ましてくれる。日本の漫画文化を支えるペン先を業界全体で守ろうという雰囲気が、品質向上を積み重ねる「カイゼン」の原動力だ。(堀口元)
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■山鹿功司氏 朝日新聞 デジタル より
 
■筆記検査機

■「チタンGペンプロ」
 ゼブラのHP より