論文集のスタイル

●今日は、研究会があって、久し振りに東京へ行った。2人の研究発表があり、若い研究者の『大坂物語』の成立に関するものには、感激した。これから、という若い人の発表は、研究への情熱がヒシヒシと伝わってくる。先日、吉川弘文館の『歴史手帳』について触れたが、私も、若い頃は、そうだった、とつくづく思い出した。
●ところで、研究発表が終ったあとの雑談で、雑誌に発表した論文をまとめて論文集として単行本で出版する時のスタイルが話題になった。自然科学の論文は、ネイチャーやサイエンスなどの雑誌に発表されて、公表されると同時に、世界中の科学者が読んで、さらに、その先を時間を争って研究を進める。従って、理系では、単行本化は問題にならない。
●それに、引替え、文学関係等では、実に悠長なものである。過去、30年間に発表した論文を集めて、1冊の研究書にする。これが普通である。そのまとめ方も、様々である。今、読み返してみると、20年前の論文で、現在の研究水準からみて、余り意味のないものもあるが、私の研究史として、そのまま、収録した、などと、あとがきに書いている御仁もある。
●そうかと思うと、別の研究者は、雑誌発表の初出一覧を示し、その後の研究経過をふまえて、修正すべき部分は修正して、最新の状態にして単行本にしている人もある。研究論文は、いずれは、後人によって乗り越えられる運命にあるが、できれば、その時点での最新の状態で単行本化してもらえれば、利用者としては、有り難い。そんなことを密かに思った。