出版不況 電子書籍に期待

●今日の朝日新聞は、長い不況の続く出版界を取り上げている。新刊書が低調で、書店数も減少している。特に目立つのは、月刊誌・週刊誌などの発行部数の激減だという。図表のグラフによると、2000年に50億部だったものが、2014年には30億部を切っている。これに対して、電子書籍は好調だという。マンカなどが本の25%を占めるらしい。これでは、出版界も、電子書籍への対応に、大きくカジを切ることになるだろう。
●日本の出版界は、出版社→取次→書店→読者 という再販制度である。書店は売れ残った書籍・雑誌を出版社に返品することができる仕組みである。この返品が40%近いという。これでは、運送費・人件費にムダが生じる。KADOKAWAの角川歴彦氏は、今、メデイアの交代期と指摘している。長い歴史と仕組みをもつ出版界が、電子書籍という新しいメディアと、どのように対応してゆくか、今、正念場であろう。
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出版社生き残りの道は 多メディア展開、コスト削減進む守真弓、竹内誠人
2014年10月18日23時42分

落ち込む雑誌と減る書店
 なぜ本が売れないのか、どうすれば生き残れるのか。出版大手各社の思いや取り組みは様々だ。
大手出版各社、電子書籍急伸に期待 「紙の25%に」
 「今がメディアの交代期。1998年ごろまでは知識を書籍から得る人がほとんどだったが、それがインターネットにとって代わった」(KADOKAWAの角川歴彦会長)などと、多くの社がネットの影響を不況の主因に挙げる。新古書店で本を買ったり、図書館で借りたりする人が増え、新刊が売れないと指摘する声もあった。
 各社の懸念が特に強いのが、雑誌不況が書店の急激な減少を招いていることだ。光文社の丹下伸彦社長は「収益の大半を雑誌で稼いでいる小さな書店は多い。こうした書店が無くなれば、雑誌は売れなくなる。いかに雑誌を強くし、書店と生き残るかというのがテーマだ」と話す。
 講談社野間省伸社長も「昨年後半から、書店の店舗数の減少ピッチに明らかに拍車がかかっている。書店が疲弊している」と指摘。書店が減り、書店に本を届ける取次会社の経営も悪化しているとして、「戦後続いてきた出版流通の仕組みが金属疲労を起こしている状況」という。
 雑誌の総発行部数は90年代後半に50億部を超えていたが、昨年は29億部(出版ニュース社調べ)。書店数も2000年は2万1千店以上だったが、今年は1万4千店を割った(アルメディア調べ)。
 不況を克服するための試行錯誤も続く。
 メディア環境の変化に対応しようとしているのは岩波書店。岡本厚社長は「著者、出版社側の思いが優先され、読者の関心との間にずれがあったかもしれない」。今年から「宣伝部」を「マーケティング部」に改編し、「読者の立場に立った本作り」に取り組む。
 講談社は自社の作品を映画、アニメなどの多メディアに展開。世界30カ国に提供している。最近ではマンガ「進撃の巨人」の大ヒットが19年ぶりの増収増益につながった。野間社長は「出版物に競争力の根源がある。コンテンツを軸にさまざまな取り組みを進めていくしかない」と話す。
 各社とも力を入れるのはコストカットだ。出版界では、再販制度で本の価格を出版社が決められる一方、書店は売れ残り本を出版社に返品できる。こうした特殊な制度が高コスト体質を生み、返品の割合は業界全体で4割近い。無駄な運送費や断裁費用が課題だ。
 日経BP社は徹底的なコスト管理をしている。経営会議では、1冊ごとに、人件費や間接経費も含んだ上で、利益が上がっているかを検証。長田公平社長は「出版も製造業。紙の種類の絞り込みから徹底的に見直していく。コストカットは宝の山だ」。
 集英社も、さまざまなデータに基づいて初版部数や増刷部数を調整することで、返品率を雑誌27%、書籍30%まで落とした。
 一方、出版界の特殊な制度をどうしていくかについては様々な意見が出た。
 一定期間を過ぎたら本の価格を自由に設定してもいいという意見がある一方、今は再販制が適用されていない電子書籍についても、「電子も定価販売を可能にすべきだ」(新潮社の佐藤隆信社長)との指摘もあった。
 KADOKAWAとネット企業ドワンゴ経営統合で注目が集まる業界再編については、「再編の動きは、一段落したと思っている」(角川会長)、「出版社はそれぞれ固有の文化を有するが、異なる『文化』はなかなかひとつにはなれない。再編は進まない」(佐藤社長)などの慎重な見方が多かった。(守真弓、竹内誠人)
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■出版不況の克服
 朝日新聞 デジタル より