「江戸文学研究室」

●今日は、嬉しい便りが届いた。本年4月から、近畿大学産業理工学部に勤務することになった、位田絵美氏から『かやのもり』第18号(平成25年7月25日、近畿大学産業理工学部発行)を頂いた。この号の「研究室だより」に位田絵美氏の執筆された「江戸文学研究室」が掲載されたのである。日本文学、日本古典文学、等々が大学の学科名やカリキュラムなどから姿を消して、寂しい思いをしている今日、「江戸文学研究室」は嬉しい。位田氏は、その「たより」の中で、次のように述べておられる。
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 専門は、江戸時代の文学研究です。文学と、それを支える歴史学の史料を素材をして、日本の対外認識や日本人観の分析を行っています。為政者側が指導した異国観・異国人観ではなく、民衆側から見た庶民レベルでの認識や交流を、丹念に分析するのがねらいです。従来は妄言虚語であるとして、研究対象外とされてきた編著者未詳の長崎の写本群(「長崎旧記類」)や、史実の漂流事件が脚色・物語化された過程、その結果の産物である漂流物語類に焦点をあて、これまで取りあげられなかった認識を分析しています。
 活字化されていない膨大な資料には、まだまだ明らかになっていない真実が、たくさん隠されています。その一つ一つと向き合い、当時の人々の感情や認識を探ることは、実は、現代の我々の中に無意識に眠る固定概念や先入観を正しく理解することに繋がります。
 真の国際化を目指すには、まず、自国の文化を正しく理解して評価する力がなければなりません。そこを基盤にして、諸外国の文化や歴史、その国との関連性が初めて理解できるからです。日本から、九州から、この飯塚から、世界へ文化を発信するために、学生諸君には、まず自分の無意識の中の認識を、しっかり理解することから始めて欲しいと思います。
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●位田絵美氏が、名古屋大学大学院のころに発表された、『信長記』の諸本に関する論考を拝読した時の感激は、未だに忘れられない。その後、外部的事情で多少の曲折はあったが、やがて、「近世日本の対外認識―日本から見た十七世紀末の世界―」で博士号を取得、文学と歴史の学際的分野で優れた論文を発表されている。このような経過をも考えると、「江戸文学研究室」には、感慨深いものがあるし、嬉しいのである。
■『かやのもり』第18号

■位田絵美氏の「江戸文学研究室」