入口敦志氏の力作 『武家権力と文学』 刊行

●入口敦志氏の『武家権力と文学 柳営連歌、『帝鑑図説』』が発行された(2013年7月30日、ぺりかん社発行、定価6300円+税)。

序章  武家の荘厳
第一章 柳営連歌
第二章 『帝鑑図説』考
終章  権力と出版

大略、このような内容の著作である。私は、一気に読んだ。精読ではないけれど、どなたかのように、斜め読みではない。実に読みやすく、読み応えのある内容である。入口氏は仮名草子研究者として存じ上げているが、この著書を拝読して、入口氏の研究が、この分野で見事に開花したことを実感した。私としては、教えられることばかりで、そのことが、実に新鮮であった。
●柳営連歌でも、家康の連歌、秀忠の連歌、家光の連歌、と言えば、徳川初期三代将軍の連歌の特色解明である。これは、私の時代である。仮名草子の時代である。入口氏の目の付け所に感激した。そうして、私は、多くの事を教えてもらえた。
●『帝鑑図説』の研究も有り難い。今回の著書で、初めて知見を広める事が出来た。日光東照宮の唐門の正面上部の彫刻も、これまで、ただ、漫然と眺めていたが、これは『帝鑑図説』に拠っているという。私は、東叡山寛永寺の徳川霊廟の件では、浦井正明氏に多くの事を教えて頂いた(『もうひとつの徳川物語 将軍家霊廟の謎』1983年刊)。今回、入口氏に、改めて、その内実を教えて頂けた。有り難いことである。
●入口氏の著書を拝見して、参考文献の充実を痛感した。11頁に及んでいる。私は、かつて、坂巻甲太氏と黒木喬氏の『むさしあぶみ 校注と研究』を読んだ時にも、この、自他説の峻別に感激したことがある。文学と歴史の違いなのか、研究者の姿勢なのか、今回も、参考文献を拝見して、25年前の感激を思い出した。とにかく、魅力的な新著である。私は、いずれ、精読したいと思う。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm
■入口敦志氏著『武家権力と文学 柳営連歌、『帝鑑図説』』


日光東照宮の唐門の正面上部の彫刻