若宮貞次先生を悼む

●短歌雑誌『あかね』第29巻第4号、2013年7月1日発行を頂いた。この号の「編集所便」は悲しい内容であった。若宮先生の他界を告知するものであった。
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 去る五月二十九日若宮貞次先生が他界されました。享年八十八歳(お誕生日からら十日目でした。) 戒名は「清教院法茜日貞居士」です。
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●若宮先生は、この第29巻第4号に次の歌を寄せておられる。長い短歌生活の人生のおわりに、詠じたものである。

  ○             若 宮 貞 次(東京)

 小金井の市街の見える個室にて悔なくをはるこころの吾か
 事後処理のミス多かりし独断を許したまへよ「あかね」の友ら
 来たるべきときとなりたる今にして個室のいとまをゆたかにあらむ
 教会の鐘ききながら個室にて締切り過ぎし歌推敲す
 いくたびか繰返さねばものごとの伝りがたきことばとなりぬ
 おのづからなる衰へか悪性の新生物の転移に因るか
 白髪の翁となりて武蔵野の国府を前にしづまらむとす
 今日の日にわがうつし身の世に在るはむづかしからむと思ひをりしを

●若宮先生が、わが子のように、いつくしみ、育ててきた短歌雑誌『あかね』への最後のおもいと、御自分の終焉を、規定通りの8首にこめられた。
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若宮 貞次 (わかみや さだつぐ)

歌  人 

 1926年(大正15年) 山梨県南巨摩郡身延町(元、原村)に生れる

 1947年 山梨師範学校卒業・「アララギ」入会

 1947年 山梨県・東京都公立学校勤務

 1954年 日本大学文学部国文科卒業

 1985年 短歌雑誌「あかね」主宰

 1987年 東京都公立学校長退職

   

著  書

 1969年 『作文記述活動の発達研究』(実践国語賞)

 1972年 歌集『山峡』(合著) 短歌新聞社

 1988年 歌集『万葉集短歌所見』 あかね発行所刊

 1991年 歌集『少女と少年』 短歌新聞社

 1995年 歌集『野川集』 あかね発行所刊

 1998年 歌論『万葉植物と現代短歌』 短歌新聞社

 2005年 歌論『連作と現代短歌』 短歌新聞社

 2007年 歌集『小金井集』 短歌新聞社

 2011年 歌集『続小金井集』 短歌新聞社

 2013年 歌論『続連作と現代短歌』 現代短歌社刊

短歌雑誌 「あかね」編集兼発行

 1985年(昭和60年)より刊行。毎年6号を発行。

 2013年(平成25年)第29巻。

短歌指導

○ 東京むさし野歌会

○ 小金井いずみ短歌会

○ 山梨中央歌会

○ 塩山歌会

○ 冬葵短歌会

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万葉の歌を尊び

子規以来の写実の歌

生活に即した真情の歌

重厚にして清新な歌をめざす

           【はてなキーワード】より

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●若宮先生は、私にとって、郷里の大先輩である。先生は身延町上伊沼、私は下伊沼だった。初めてお会いしたのは、東京原村会の席である。それから、数え切れないほどの御指導を賜った。『仮名草子集成』などという地味な本も読んで下さった。そして、作品の本質を一首に詠じても下さった。つまらぬ雑誌を差し上げても、必ず読んで下さり、丁寧な励ましのお手紙を賜った。

若宮貞次先生の御冥福を心からお祈り申し上げます

■短歌雑誌『あかね』第29巻第4号

■若宮先生の歌 8首