出版流通 再編

●先日の文化通信で、トーハン、日販に次ぐ、出版取次の大阪屋と楽天資本提携するということは知っていた。今日の朝日新聞によると、この動きは、出版流通の再編につながるとのこと。なるほど、そういうことかと、思う。
●私は、大学の4年の時、トーハンでアルバイトをした。田舎からお金を送ってくれたので、深刻なアルバイトではなかったが、流通する書籍や雑誌に囲まれて、本当に文化の泉の中で働いた。ゆえに、出版流通の現場も現実に見ていた。今回の動向は、この業界にネットが参入してきたことによるものだろう。
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 雑誌や本の市場が縮むなか、日本の戦後の出版流通システムが揺らいでいる。インターネット書店大手のアマゾンが巨大化する一方、街の書店は年々減り、書店と出版社とをつなぐ問屋「出版取次会社」は経営が悪化。ネット通販大手・楽天との資本提携をめざす社も出てきて、再編機運が高まっている。
「出版界に地殻変動が起きている」。業界3位の取次会社・大阪屋と楽天資本提携交渉が明らかになり、ある大手取次会社幹部は驚きを隠せなかった。講談社など大手出版社や大日本印刷も出資を検討。大手出版社幹部は「楽天参入は第一幕にすぎない」とさらなる再編を予想する。
 大阪屋の今年3月期決算は、売上高948億円で前年比で2割も減った。取引先の書店を、日本出版販売(日販)とトーハンの「2強」に、相次いで奪われたのが響いた。
 巨大な倉庫など物流システムをもつ楽天の力を借り、アマゾンに負けないスピードで読者に本を届けるなどの流通改革を目指す。楽天側も、大阪屋の取引先の書店で電子書籍端末を売るなど、リアル書店をアマゾンと対抗する拠点にする狙いがある。
 取次会社は、2強も厳しい。2位トーハンの今年3月期決算の売上高は7年連続前年割れ。日販もピークの7割まで下がっている。
 経営悪化は、出版流通の仕組みが読者のニーズに対応できなくなりつつあることを示している。取次会社の流通システムは、発売日までに大量の本や雑誌を全国の書店に一斉配送するために整備された。書店からの注文にきめ細かく応じるには、在庫管理のコストなどから限界がある。
 一方、アマゾンは取次会社から調達しつつも、独自の需要予測システムなどで自社倉庫に大量のタイトル数を無駄なくそろえ、読者への当日配達まで実現してしまった。その結果、街の書店はアマゾンに客を奪われ、約10年で約2万軒から約1万4千軒に激減(アルメディア調べ)。取引先を失った取次会社が経営難になる悪循環に陥っている。
■高い返品率、重荷に
 高コスト構造の問題もある。日本では原則、書店が売れ残った本を出版社に返せるが、その「書籍返品率」は38%と高止まりし、無駄な運送費や裁断費用などで出版社も含む業界全体を苦しめている。一方アマゾンは返品が少ない。
 日販は、返品率を下げた書店に「報奨金」を支払う仕組みを導入して3割強まで下げるのに成功したが、書店側からは「売れにくい本が棚から消え、書店が持つ一覧性の機能が下がる」という批判もある。出版文化の豊かさを守りつつ、合理化をどう進めていくかが問われている。(赤田康和)   【朝日新聞 デジタル より】
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朝日新聞 6月17日