辞典編集 の頃

●私は、長澤規矩也先生の推薦で神田の誠文堂新光社の辞典部にお世話になった。辞典部の部長は法政大学教授の林田不二生先生。私は、その下で編集の責任者を務めた。諸橋徹次門下の先生方の『机上漢和辞典』を完成させた。この漢和辞典は、従来の部首による検索ではなく、筆順部首を採用した画期的な辞典だった。私は、ここで、漢字に関する知識を徹底的に学んだ。
●この時、大修館書店の漢和辞典の責任者の御指導を頂いた。また、三省堂辞典部の課長さんにも、いろいろ教えて頂いた。写植の写研にも大変お世話になった。常用漢字の告示に際しては、漢字の字体・字形に関して、御意見も申し上げて協力もした。
●印刷の元になる版下は、非常に貴重な財産ゆえ、銀行の貸金庫に保管した。この版下から刷版をつくる製版は、大漢和辞典の近藤写真製版所に依頼した。本文印刷は、オフセット印刷で120年の伝統をもつ開成印刷だった。製本は藤沢製本。いずれも超一流の会社である。

本文組版 新興印刷株式会社
写植文字 株式会社写研
本文製版 株式会社近藤写真製版所
本文印刷 開成印刷株式会社
製   本 藤沢製本株式会社
本文用紙 山陽国策パルプ株式会社

●このように、優れた技術の協力によって、年間20万部発行する辞典は支えられていた。本文用紙も特漉である。厚からず薄からず、文字も写真もきれいに印刷できる用紙、高速印刷ゆえ紙粉が飛ばない用紙。
●編集部からの指定に従って進行する。刷色・刷位置・寸法・・・、あらゆる点に注意して記入する。2万部ずつ印刷する辞典は、編集部・資材部のゴーサインで進行し、やがて書店から読者に届けられる。私の人生の中でも充実した時間だった。
■開成印刷株式会社  現在の状況

■写研 のブース