小川武彦著 『百物語全注釈』 刊行 !!
●小川武彦氏の労作『百物語全注釈』上下2巻が刊行された(2013年2月25日、勉誠出版発行、A5判、964頁、25000円+税)。仮名草子作品の全注釈は初めての研究である。やや、停滞気味の仮名草子研究の現状にあって、嬉しい知らせである。
●本書刊行の経緯について、近世文学注釈学の第一人者・前田金五郎先生は、本書の「前書」で、次のように述べておられる。
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「前 書
本書の素稿は、昭和四十年五月の日本古典文学大系第九十巻『仮名草子集』(森田武氏と共著)のために執筆した原稿(本文と注・補注)である。ただ、同書のスペースには収容不可能となったので、不本意ながら削除して、原稿は手元に保管して数十年経過したが、二・三年前取り出して一読した所、今でも発表するだけの学術価値はありそうだと感じたので、拙家に勉強に来られる小川武彦氏に手交し、より完全な原稿とするように依頼した所、同氏は快諾され、原稿が出来上がるたびに持参され、会読、その不十分な点を点検する作業が二年ほど続いて今日に至った。小川氏の原稿は、広く諸文献を参照され、筆者の原稿と雲泥の差があり、九分九厘同氏の執筆と称しても差支え無く、いわば大増補修正版であり、現今近世前期作品の模範注釈書と称すべきであろうし、今後の仮名草子研究に多大な貢献をなすべき研究となろう。仮名草子研究者は先ず本書を一読して、その研究を開始するのが、その研究の進展を保障するとさえ筆者には判断される。
それにしても、筆者が執筆した時期から、数十年間に研究の進歩は驚くべきものがあったと、今更ながら満九十二歳の筆者には感慨にふけるのみだが、小川氏の努力に感嘆すると共に、今後の一層の精進を願ってやまない。
平成二十四年十一月十九日
前田金五郎」
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●草稿は、前田金五郎先生が『日本古典文学体系・仮名草子集』に収録予定で作成されたが、スペースの関係で収録出来なくなり、それを基にして、小川氏が全注釈の形式で仕上げたものである。前田先生は、本年2月21日、92歳の天寿を全うされた。その最晩年の3年間、小川氏は『全注釈』の原稿を作成し、前田先生とお二人で検討され、完成稿に仕上げられたという。前田先生は、99%は小川氏の執筆と申され、
「近世前期作品の模範注釈書と称すべきであろうし、今後の仮名草子研究に多大な貢献をなすべき研究となろう。仮名草子研究者は先ず本書を一読して、その研究を開始するのが、その研究の進展を保障するとさえ筆者には判断される。」
と記しておられる。
●早速、本書を最初から読み始めた。まだ、少ししか読んではいないが、仮名草子作品に、このように、詳細緻密な注釈を加えられた著者に対して、感謝と敬意を申し上げる。前田先生も述べられるように、今後の仮名草子作品注釈の、お手本になるものと考える。
●小川武彦氏と私は、長いお付き合いである。氏が大学院生の頃から、仮名草子研究を通じて、多くの事を教えられ、ご配慮を賜ってきた。勉誠社の「近世文学資料類従」頃から、前田先生と小川氏の交流は始まったと思うが、碩学・前田先生の真の学問的継承者となられたことを、本書は立証したものと思う。上下2冊のずしりとした本書を手にして、仮名草子研究についての学恩を思わずにいられない。これから、1話1話、拝読して、学びたい。
★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/kanabun/shin.htm
■小川武彦著 『百物語全注釈』