短歌雑誌 『あかね』の新展開

若宮貞次先生の編集発行される、短歌雑誌『あかね』の第29巻第2号(2013年3月1日発行)を拝受した。表紙の中村研一画伯の絵は同じであるが、中を開いて、この短歌雑誌の新展開に驚くと共に、大きな感激を覚えた。

●巻頭には、五味保義先生の、昭和7年の歌など3首、
  湖 光
 妻とゆく心なごみにわが思へばすぎゆきて君はしづかなりけり  昭和七年
 墓土のひくきに置ける石一つ青くつきたる苔はかわきて
 湖(うみ)のひかり来(きた)るゆうべの時たちて心こほしきおくつきどころ
           歌集『清峡』より

●続いて、若宮先生の歌18首、
 雪の上に落果をしたるセンダンのおびただしもよ今朝のわが庭
 吾が庭に三代めとなるユズリハの茂る若木を伐らねばならぬ
 素直なるこころとなりてステッキを引きつつ歩む老となりたる
 ベッドにて臥せりながらの老の身の何をなすべき何ができるや
 立ち上がり老のしこ踏む滞る選歌をなさむレイアウトせむ
 いよいよのときとしなりしわが心変りて止まず二たたび三たび

●新展開に驚いたのは、次のような告示が掲載されていて、「編集兼発行人」が若宮貞次先生ではなくなっていることである。


●「あかね」の新展をめざして 
  組 織
1、主宰者 若宮貞次が退き、新事務局を新設し、編集委員が編集する。
2、事務局に、木村温子・武田輝久子・西山澄子・上村玲子・代田由紀・澤田加津子・田畑靖子が入局する。
3、会計 ・・・、会計監査 ・・・
4、選歌は当分の間無し。自選八首以内とする。
5、新発行所「あかね発行所」 木村温子方
6、会費 ・・・

この告示によれば、若宮先生は、1985年から継続してこられた『あかね』の編集兼発行者の任から、身を退かれ、同じ志をもった同人の方々に、この雑誌の運営を委ねられたのである。見事な歌道の継承だと思う。長い間、若宮先生の薫陶を受けられた、同人の方々は、


 万葉の歌を尊び
 子規以来の写実の歌
 生活に即した真情の歌
 重厚にして清新な歌をめざす


という、歌の道を心に秘めて、今後も精進されるものと思う。

■短歌雑誌『あかね』の第29巻第2号