渡辺憲司氏の 『江戸遊女紀聞』

●渡辺憲司氏の『江戸遊女紀聞――売女(ばいた)とは呼ばせない』が刊行された(2013年1月31日、ゆまに書房発行、定価1800円+税)。オビに、
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「不義にして義あり、不道にして道あり」(藤本箕山『色道大鏡』)――太夫から飯盛女まで、各地の遊女一人ひとりの知られざる生涯に光をあて、新しい遊女研究への視座を提示する。
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とある。

●早速、読んだ。B6判・366頁、大著とは言えないかも知れない。しかし、内容は充実している、労作である。藤本箕山の名著・『色道大鏡』を徹底的に研究されて、その基礎の上に立って、江戸・大坂・京都は言うまでも無く、日本各地の遊廓の地をたずね、そこで名を残した遊女達の生き方に思いを致し、考察を加えている。本書のサブタイトルが、著者の意図を示している。

●渡辺氏には、『仮名草子集』(1991年2月28日、岩波書店発行、渡辺守邦氏と共著)があり、仮名草子作品への詳細な注釈をされ、また、『近世大名文芸圏研究』(1997年2月28日、八木書店発行)という大著がある。仮名草子研究の分野で大きな実績を残された。氏は、その後、江戸時代の遊女の研究に打ち込まれ、『色道大鏡』の注釈という大事業に取り組まれた。そのようなベースがあって初めて、この度の労作が刊行されたのである。

●私は、遊女評判記研究の第一人者、小野晋先生には、長年、あたたかい御指導を賜った。「評判記」に興味を持っていたからである。諸作品を読むたびに、一人一人の遊女の身の上を想像し、遊女の研究をしたい、という衝動にかられた。しかし、限られた時間にゆとりは無かった。そんなこともあり、この度の、渡辺氏の御著書を読んで、大変、多くの事を教えて頂いた。感謝している。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/kanabun/shin.htm

■渡辺憲司著『江戸遊女紀聞――売女とは呼ばせない』