「崩れ落ちる兵士」 NHKスペシャル

●昨夜の NHKスペシャル「沢木耕太郎の 戦場写真最大の謎」は、興味深いものだった。戦場カメラマンとして有名な、ロバート・キャパの最高傑作「崩れ落ちる兵士」の謎を追究するもの。この1枚の写真は、1936年9月、スペインのコルドバ戦線でのものである。この写真は、果たしてキャパのカメラでキャパがシャッターを押したものであろうか、この兵士は、弾丸に撃ち抜かれて、崩れ落ちたのだろうか、という謎に迫った。

●この現場には、キャパと、彼の恋人、ゲルダ・タローがいたらしい。キャパはライカゲルダローライフレックスを使っていたという。どうも、この写真はライカではなく、ローライではないか、と推測する。また、この兵士の写真は、実戦ではなく、演習でのものではないか、と肉薄する。その時、実戦が展開されていたか、という吟味もする。

●結果的に、この1枚の写真が、キャパのものでなくても、実戦のものでなくても、戦場カメラマンとしての、ロバート・キャパの評価に影響は無い、と私は考える。キャパは、その後、ノルマンディ上陸作戦にも参加し、名作を撮った。1954年5月、第一次インドシナ戦争に参加し、地雷に触れて死亡した。40歳であった。

●思い出せば、こんなことがあった。上田秋成に関して、恩師・重友先生と二人で話し合っていた時、秋成の癲癇症についての大場氏の著作に話題が及んだ。私が、あれこれ、申し上げたら、先生は、深沢君は、秋成の『雨月物語』を評価するのでしょう? 『春雨物語』を高く評価しているのでしょう? それなのに、そんなことを詮索して何になるのかね。と注意された。芸術とは、このようなものであろう。この一瞬は、私の胸に強く響いた。

■「崩れ落ちる兵士」  ネット より