草間弥生さん お元気

朝日新聞のフロントランナーに、前衛芸術家の草間弥生さんが登場した。今、83歳で、ますますお元気である。東京外苑東通り沿いに、5階建てのビルを建設し、草間さんの作品を所蔵し、展示する個人美術館にするとのこと。草間さんの作品はアメリカを始め、世界の有名美術館に所蔵されているが、個人的にも御自分の作品を後世へ伝えたい、ということらしい。これだけの芸術家であるから、当然のことである。

●私が草間さんと初めてお会いしたのは、彼女がアメリカから帰国した頃、昭和53年のことだった。著作権に関して相談されたのである。草間さんの著作を出した出版社が、その本の宣伝に草間さんの絵を無断で使用し、しかも、作品の部分を切り取って使った、これは著作権の人格権侵害ではないか、という内容であった。私は著作権には興味があり、文化庁の講習にも出ていたので、引き受けた。当時、草間さんは、長年、ニューヨークで活動していたため、英語は話せるが、日本語は不得手になってしまい、2人の会話は筆談だった。

●草間さんの小説『マンハッタン自殺未遂常習犯』であるが、序は、ハーバート・リード卿、跋は瀧口修造だった。私は大学の芸術学を履修していたが、テキストは、ハーバート・リードの『芸術の意味』で、訳者が瀧口修造だった。草間氏によれば、ハーバート・リードは友達であると言う。長野出身の草間氏の絵の才能を見出して、アメリカ留学を薦めたのは瀧口修造であった。

●草間さんは、ニューヨークで窮乏生活の中で芸術活動を続け、アメリカでは高く評価されたが、私がお会いした頃、日本では余り知られていなかった。以後、日本でも認められるようになり、文化功労者にもなった。

■最近の草間さん 朝日新聞 1月26日 より