進化する芸術

●教え子の出村さんから年賀状をもらった。昨年の中国で開催された「国際ファイバーアート展」に出品した作品「天涯のはな」が印刷されている。出村さんは、昭和女子大の国文科の時、卒論に『奥の細道』を選択して、私が指導した。その後、京都の芸術大学で学び、〔織り〕の世界に没頭された。

●出村さんの〔織り〕とは、細い絹糸を染めて織り上げる。縦糸は黒色で千本ほどある。仕上がりのイメージをデザインして、横糸を染め上げる。髪の毛ほどの絹糸を1本1本織り上げる。気の遠くなるような制作過程である。

●今回、中国展で優秀賞を受賞されたという「天涯のはな」は、これまでの、何回かの作品展の作品が、平面であったのに対して、立体的な作品である。京都の寺院の大広間に展示された作品に、その萌芽は感じられたが、今回、完全に新しい境地に進化した、私は、そう思った。

●私が、出村さんの作品展を初めて観たのは、2009年9月であった。東京駅八重洲口にある、千疋屋ギャラリーであった。小ぢんまりとした空間に5点の作品が展示されていた。地味ではあったが、静かに惹きつけて迫るものが感じられた。その後の進化に、敬意を表する。

■出村実英子作 「天涯のはな」