佐藤春夫著 『上田秋成』

昭和女子大学中西裕先生の、今月の「書誌図書関係文献」は、研究者編である。おや、と思われる文献に出会える。
小田切秀雄 『人間の信頼について』 こぶし書房
○立石伯 「著作目録」 「日本文学誌要 85」
島田謹二 「著作年表」 『『華麗島文学』とその時代:比較文学島田謹二』三元社
○築島 裕 「著作略目」 「汲古 60」
渡辺京二 「著作目録」 『ドストエフスキーの政治思想』 洋泉社

●私としては、いずれも触発される情報である。小田切先生の『人間の信頼について』はよく読んだ。立石伯氏は小田切先生の教え子で、梶木剛氏の記念会でも会っている。そういう、時間の経過を思う。

島田謹二先生は、佐藤春夫の『上田秋成』の編集を担当していて、忘れられない先生である。昭和37年、腰掛のつもりでお世話になった出版社・桃源社の専務から、深沢君、これをやりなさい、と指示されたのが、大作家・佐藤春夫の『上田秋成』だった。寝る目も寝ずに取り組んだ。その本の「まえがき」が島田謹二先生、「あとがき」が重友毅先生だった。優秀な奥村印刷を使って良い本に仕上げた。しかし、その直前に、佐藤春夫が他界され、先生に見て頂けなかった。残念ではあったが、私の担当した本として誇らしい一冊である。それにしても、作家の佐藤春夫と、研究者の重友先生とで、『雨月』『春雨』の評価が同じであったのは、なるほど、と思われた。

佐藤春夫 著 『上田秋成

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