精神一到何事不成

●風邪のせいで遅れていた年賀状を今、書いている。中学校の数学の先生の所まで進んで、はた、とペンは止まった。望月昭先生、私たち生徒より5歳か6歳上の若い先生。私達の原中学校が初めての教員生活だったかと思う。先生の授業は難解で進度が速く、私はついて行くのがやっとだった。

●中学卒業の時、サイン帳が流行っていて、私も望月先生に、一筆お願いします、とノートを差し出した。先生は、筆をとりサラサラと書いて下さった。高校・大学と進み、時折、ノートを開くと「精神一到何事不成  望月 昭」とあった。私は、この金言に何度も励まされて、学業を続けた。

●後年、クラス会(末広会)で望月先生にこの事を申し上げたら、先生は粟山という号を持つ書家になっておられた。改めて筆をとって額装にしてプレゼントして下さった。この金言の出典は『朱子語類』である。
「陽気発処、金石亦透、精神一到、何事不成」精神を集中して事に当れば、どんな難事でも成就しないことはない。私は、中学卒業の時に、このような古人の名言をプレゼントされていた。ただ、感謝あるのみ。

■望月粟山書 今、原稿執筆デスクの前で励ましてくれている。