井関隆子の仏教批判

●井関隆子の創作『さくら雄が物かたり』は、6巻から成っていて、
 1之巻 花のあるじ
 2之巻 神あそび
 3之巻 なみだの玉
 4之巻 旅の屋どり
 5之巻 こがねの山
 6之巻 さくら河
という構成になっている。『竹取物語』に構想を得て創られた作品である。かぐや姫に対応する主人公は、桜雄という男性である。桜の古木の根元から発見された赤ん坊は、成長するにつれて美しくなり、光源氏よりも美しく、薫の大将よりも芳しい香りを放った。その美童振りは江戸中の評判となる。

●桜雄に見せられた人々は、我がものにしたいと押し寄せる。
○さるべき国の守。○某の僧正。○くれがしの阿闍梨。○世に尊ばれている修験者。○いう甲斐なき老法師。○やんごとなき山の座主。○さまざまの別当僧都・律師。○見苦しい山伏。京の門主。○近所の寺の僧正。○海上の翁の娘。○某の少将の姫君。
●桜雄は、多くの人々に言い寄られ、家庭を巻き込んでしまって、その苦しみの余り、愛宕山の麓を流れる川に身を投じて果てる。川岸の桜の枝に桜雄の小刀がかけてあり、その緒に短冊が下がっていた。その歌は、
 のこりなくちるぞめでたき桜花ありて世の中はてのうければ

●私は、隆子のこの作品は、『竹取物語』にヒントを得て創ったもので、その根底には、仏教批判があると思っている。