『竹取物語』 と 井関隆子

上原作和氏等の著書『かぐや姫と絵巻の世界 一冊で読む竹取物語 訳注付』を拝読したら、『竹取物語かぐや姫昇天の条について、益田勝美先生は、次のように解釈しておられるという。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
「俗塵にまみれ、悲喜にほんろうされて生きる人間世界の恩愛の絆に苦悩するこの美女に、物語の読み手は、喝采を送りたくなる。人間万歳! 誰もが脱出したいと思っている世界であっても、愛する者を捨てて、われひとりのがれ出たいとは思わないであろう。人間界、それはなんとふしぎなところであろうか。」(『益田勝美の仕事』第2巻、ちくま学芸文庫、2006年)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
「人間および人間性の問題を、複雑な構造においてつかもうとする点」に、その最も大事な特色があると想定した。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
このように、上原氏は述べておられる。実は、私は、法政で益田先生に、いろいろ教わった。物語の祖としての『竹取物語』の存在の大きさを確認できた。

●日本の物語の出発点となった『竹取物語』は、その後、様々な解釈をもって伝承されてきた。それらの諸説は20説以上になるだろう。それだけ、この作品が多くの可能性を包含していたことになる。

●さて、幕末の旗本の主婦、井関隆子は『さくら雄が物かたり』という創作を遺している。これは、東北大学図書館の「狩野文庫」に所蔵されているもので、仮名垣魯文の旧蔵である。東北大学の新田孝子先生が発見、報告された。当初は「鹿屋園の庵ぬし 源隆子」の作とされていた。この隆子が井関隆子と同一人物だったのである。

■井関隆子作『さくら雄が物かたり』東北大学附属図書館蔵