奈良絵本 『竹斎』

●このところ、『仮名草子集成』の校正をしていて、今日、ようやく、奈良絵本『竹斎』の初校が終った。『竹斎』は仮名草子の中の代表的な作品である。作者は、富山道冶という医者で、曲直瀬玄朔に医学を学んだ。医学の知識は相当のもので、古活字本や整版本で読んでも、現在の私などには理解できない知識が連続していて、笑う前に疲れてしまう。

●野田寿雄先生の、『日本古典全書 仮名草子集』(昭和37年)や、前田金五郎先生の『日本古典文学大系 仮名草子集』(昭和40年)の校注がなければ、作者の知識についてはゆけない。この作品を味読できたのは、漢方医学の常識を身に付けていた教養人のみであろう、と前田先生は説いておられる。

●今回、『仮名草子集成』に収録する、奈良絵本『竹斎』は貴重な写本で、この作品を校訂した担当者は、大変な苦労をされただろうと、感謝しながら、校正を進めた。世間では、校訂の仕事を、とかく軽視しがちであるが、とんでもないことである。

●平成23年6月、日本近世文学会の展示

■奈良絵本 『竹斎』

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■奈良絵本