『源氏物語』をむさぼり読んだ少女

●今日の「天声人語」は、次のように書き出している。
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 千年近くも昔、たいそう読書好きの少女がいた。世は平安時代、書物は希少だ。彼女は等身大の仏像を造り「あるだけの書物を全部読みたい」とひたすら願う。菅原孝標女と呼ばれる人で、その「更級日記」に愛書ぶりが詳しい▼上洛し、憧れの源氏物語を全巻もらうと天にも昇る心地になる。「間仕切りの中に伏して一冊ずつ読む喜びといったら、后の位も比ではない」と書き、「昼はずっと、夜は目の覚めている限り、灯を近くにともして」読みふけった。そんな少女が喜んでいよう・・・ (以下省略)
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秋山虔先生は、昭和55年7月、新潮日本古典集成の一冊として、『更級日記』を出版された。このシリーズのスタイルとして、頭注のほかに、2色刷で現代語訳を小字で行間に補った。素晴らしい注釈書である。私は、大学を卒業以来、秋山先生に数え切れないほど、御指導、御配慮を賜った。先生は、この『更級日記』を御恵与下さったのみならず、一筆添えて下された。私の校注して出した『井関隆子日記』に関しての御批評である。先生は、御多忙の中で、この幕末の女性の日記に目を通して下さったのである。「あちこち繙き おや 蜻蛉日記(下巻)の文章と同趣だ などと 感心しております」私信ではあるが、このようなお言葉を賜り、私は本当に有難いと、心から感謝した。

秋山虔 校注 新潮日本古典集成『更級日記