古典の日、11月1日。

●今日から11月である。11月1日は「古典の日」に制定されたと言う。『紫式部日記』の寛弘5年(1008年)11月1日の条に、『源氏物語』の作者・紫式部に対して、左衛門の督が、「あなかしこ、このわたりにわかむらさきやさぶらふ(恐れ入りますが、このあたりに若紫の姫君がいらっしゃるのでは)」と語りかけたとあり、「若紫」とは『源氏物語』の登場人物であることから、この記述は日本を代表する古典文学である『源氏物語』が歴史上はじめて記録されたもので、これを根拠としているという。

●2012年(平成24年)3月に超党派議員連盟「『古典の日』推進議員連盟」が国の制定する記念日とする法案を議員立法で提出し、8月29日に参議院本会議で成立したが、国民の祝日とはなっていない。

●この根拠は、日本の古典文学を代表する『源氏物語』とその作者・紫式部に関わるもので、納得できる。池田亀鑑氏・秋山虔氏は、昭和33年に『日本古典文学大系』に『紫式部日記』を収録されて、わかりやすい注を付けられた。その成果に基づいて、岩波文庫にも収録され、多くの読者に親しまれた。

●平安朝の女流文学は、平仮名表記が多く、現在の私たちには読みづらい。そこで校訂する時、適宜、漢字をあてて、意味が取りやすいようにする。実は、私は幕末の旗本の主婦の『井関隆子日記』を校訂するとき、原本の仮名書きを漢字に改めて、読みやすくしたが、この時に、参考にしたのが、秋山虔先生の『紫式部日記』であった。漢字に変える場合に問題になるのは、その送り仮名の処置である。これに関しては、著者・隆子の慣用を重視して決めた。

●11月1日は古典の日である。季節は読書の秋、日本人である私達は、祖先の遺してくれた、古典文学を大切にして、大いに享受したいものである。

■『紫式部日記絵巻』 五島美術館所蔵
 同館のホームページ より

■『日本古典文学大系』所収『紫式部日記
 池田亀鑑・秋山虔 校注
寛弘5年(1008年)11月1日の条