Uターンラッシュ

●毎年のことであるが、この時期、故郷でお盆を迎える人々のUターンラッシュで新幹線や高速道路は大混雑をする。東京に向かう東北、秋田、山形、上越、長野の各新幹線の上り指定席はほぼ満席で、一部列車の自由席は150%に達した、と報じている。

●私は、仮名草子作品の諸本調査で全国に出掛けたが、出来るだけ混雑は避けるようにしてきた。ただし、若い頃は、事情が許さず、深夜の寝台特急ブルートレインや、お盆休みを利用したこともある。忘れもしないのは、秋田県立図書館の絵入可笑記調査の時のことである。

●昭和43年8月10日、第2津軽で秋田へ行った。夜9時30分発、上野へ行ったら、この時期、特別に品川発だという。品川へ行くと、発車寸前、ホームは無くて、線路を歩いて乗車口へ。しかし、どこも満員。人が外に溢れていた。あきらめかけたら、ホラ乗りな、と手を差し伸べてくれた人がいた。2、3人に引き上げられてようやく車内へ。ドアが閉まる。列車は動き出す。助かった。皆さんに御礼、御礼。

●自由席の混雑振りは、半端じゃなかった。誰かが指示を出す。子供・女性を優先的に座ってもらう。荷物は1箇所に集めて積み上げる。私のニコンは下積みで大丈夫かな、そんな贅沢は言えない。男性は、ようやく立って、少しゆとりができた。話した、話した、一晩中。当然、皆、東北の人々。私は山梨だけれど、ズーッと山形、新潟、福島を研究している。それで、話は合った。小さい会社の社長さん、駆け出しの社員、個人商店の経営者、多くの人々が、自分の生き方を話してくれた。やがて、途中で下車する者も出てくる。窓から、バナナや飲物が投げ込まれる。それを頂きながら、また、話し合った。

●午前10時13分、秋田着、駅の掲示板を見たら、自由席の乗車率は200%だった。しかし、こんなに、東北の人々と話し合えて、たくさん、たくさん、良い人生を教えられた事は、大疲労に変えがたい宝の思い出である。次の日、仙台へ回って、東北大の本を調査した。

■今年の新幹線の混雑振り