平林文雄氏の 近著 『山本有三研究』

●平林文雄氏の近著『山本有三研究――中短篇小説を中心に――』が発行された(2012年8月10日、和泉書院発行、定価3800円+税)。まだ、途中までしか拝読していないが、労作、快著だと思う。平林先生は昭和3年のお生まれであるから、現在82歳。頭の下がる研究人生である。

●平林先生は、旧制の身延中学を卒業後、東北大学の大学院で国語学を専攻された。当然、国語学関係の御著書がたくさんある。先生には日本文学研究会の常任委員時代に、多くの御指導を賜ったが、私には、一つの疑問のようなものがあった。それは、先生の研究分野に関してである。先生の御著書には、国語学関係の他に古典文学関係の御著書が多い。これは納得していたが、その他に近代文学関係の御著書が多い。中島敦山本有三関係の御研究がある。その疑問が、今回の御著書の「あとがき」を拝読して氷解した。

●先生は、木更津工業高等高専の教授の時代に、学生に山本有三の作品を教えられたという。その時、有三の作品を精読された。折りしも、『日本近代文学大系』が角川書店から刊行されることになり、山本有三集の担当者のリストも知ることができた。その時、平林先生は、全く面識のない担当者に直接お会いして、山本有三集の担当に協力させて欲しいと願い出たという。その担当者は快く承知して下さったという事である。私は、この経緯を、今回の著書で知って、先生の近代文学研究、殊に、山本有三研究の核心を理解することができた。平林先生の文学研究に対する純粋性を見ることができた。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■平林文雄氏著『山本有三研究――中短篇小説を中心に――』