拓本 2  ―秋色桜 句碑―

●私は、1度だけ句碑の拓本を採ったことがある。昭和61年の昭和女子大学の昭和祭(文化祭)で、国文科は確か「女性と文学」というテーマで展示した。近世の女流俳人では、お秋をも採り上げることになり、上野公園の「秋色桜」の句碑の拓本を展示することに決った。上野寛永寺の浦井正明先生の御指導も頂いて進めた。

●8月に入ってすぐの頃、学生11名と上野公園へ行き、「秋色桜」の句碑の拓本を採った。私も初めて経験、学生と共に、拓本の採り方を勉強して、道具も揃えて、何とか完成することが出来た。上野公園は見物客も多く、私は、専門家ぶって学生を指導したが、内心はヒヤヒヤものであった。懐かしい思い出である。

●元禄の頃、江戸日本橋小網町の菓子屋の娘、お秋は優れた才能の持ち主であった。9歳の時、宝井其角の門に入り、俳諧の指導を受けた。俳号は菊号亭秋色。そのお秋が、13歳の時に、花見客で賑わう井戸端の様子を詠んだ句の碑が建っている。

 井戸はたの 桜あふなし 酒の酔   秋色

■「秋色桜」の句碑