神津武男氏の労作 「浄瑠璃絵尽作品名別所在目録」

●大東急記念文庫の『かがみ』第42号(平成24年3月31日発行)に、神津武男氏の「浄瑠璃絵尽作品名別所在目録(未定稿)」が掲載されている。従来の研究成果を踏まえて完全目録を目指している、大変な労作である。この種の目録は、悉皆調査を目指さなければ意味はない、と私は思っている。その意味でも、頭の下がる労作であり、敬意を表する。

●この『かがみ』第42号の編集後記に監修者の長谷川強氏が、戦後の図書館等の資料調査の苦心談の1コマを紹介されている。

「・・・本を請求する時、司書など出納を事務的にする人ならばよいが、研究者であったりすると、自らの関心の範囲の書物を囲って見せしぶるという事がある。・・・紹介者によってはあそこへは手土産をと注意される事もあったが、そんな事も関係があったのかもしれない。要するにそれを扱う部署の人の裁量一つで左右されるのであった。親切であった人、ニベもなかった人、いろいろ思い出はつきない。
 さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉

●誠にその通りで、私にもさまざまな思い出がある。土下座をしても、翻刻の御許可を、・・・と、心中を吐露したこともあった。所蔵者は、保存・管理に大変な御苦労をされる。しかし、研究者ではないのだから、著書に〔名〕を出したがっては、これは、ゆき過ぎである。まさに、さまざまなことを思い出す桜である。

■『かがみ』第42号

神津武男氏「浄瑠璃絵尽作品名別所在目録(未定稿)」