横山重先生 ありがとうございました

●『芸文稿』5号に、横山重先生との出合い、思い出を書き留めた。私は、この雑誌は、余り多くの方々には差し上げていない。私のものは、私中心の雑文が多いからである。ごく少数の方にお送りしているが、その中で、さらにごく少数の方から、イイよ、よく書いた、と御返事をもらった。

●大多忙の作家がいる。次作の校正に追われ、食事休みもせずに朱を入れる毎日、そんな時、到着して、ほとんど目を通さない本や雑誌の山の中の『芸文稿』に手が伸びたという。私の横山先生を読み出して、止まらなくなって、全部読んじゃった、と申される。しかも、追われる仕事をホッポッて、手紙まで書いて下さった。

「感動しています。ウルウルとしています。」

と書き出して下さった。思い出は全て過去のもの。過去のものは、実践したことの記録である。「・・・しよう」ではなく「・・・した」である。だから、このような御返事を頂くと、嬉しくなる。

●もう1人の方は、私が最初に自費出版で出した『可笑記評判』を、横山重先生から頂いたと知らせて下さった。この先生は、今も御自分の御蔵書の中に保存していて下さると言う。この一つの事だけからも、横山先生とSN先生の関係や、このみすぼらしい1書の運命が推しはかられて、感謝の念がフツフツと沸く。

■『可笑記評判』昭和45年刊。