長谷川 卓 最新作 『戻り舟同心 更待月』

●長谷川卓の最新作『戻り舟同心 更待月』(2012年3月27日、学研パブリッシング発行、学研M文庫、619円+税)が発行された。早速、「第1章 更待月 ふけまちづき」を読んだ。オビに「くっきり大文字」とあるように、文字が大きくなった。老人には助かる配慮。最近は、老人が安い文庫を読んでいるのかな。しかも、書下ろしだから、この文庫で読まざるを得ない。なるほど、と思う。

●第1話、一気に読んだ。90頁ほどであるが、実に面白い。現役を引退した役人、戻り舟同心・伝次郎が、迷宮入りになった難事件を解決する趣向。第1話は、けいずかいの倉吉から象牙製の根付を押収してた伝次郎が、それを手がかりに、12年前の、一家皆殺し事件の犯人を捕らえるというもの。現在の推理もののテレビを見ているように、軽快な展開。伝次郎は、過去の事件を確認するために、奉行所の記録を利用する。そこからヒントを得て、犯人逮捕へと進む。

●江戸時代には、犯罪の記録がかなりキチンと保存されていた。私は、大学時代から、『徳川実紀』や『徳川禁令考』『江戸町触集成』などを読んでいた。犯罪の裁判などに、利用したのであろう。これらを作家が読めば、次々と構想が沸いてくるのではないかと思う。

■長谷川卓 『戻り舟同心 更待月』