吉本隆明 逝く 

●今朝、朝日新聞デジタルで、吉本隆明氏の御他界を知った。87歳であった。まず、大評論家の御他界を、心からお悔やみ申し上げる。

「在野の立場から国家や言語について根源的に考察し、戦後日本の思想に多大な影響を与えた詩人・評論家の吉本隆明(よしもと・たかあき)さんが16日午前2時13分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。87歳だった。葬儀は近親者のみで行う。喪主は未定。作家のよしもとばななさんは次女。
 東京生まれ。50年代に「転位のための十篇」などの詩作や「転向論」などの評論を開始。既成の革新勢力を批判した「擬制の終焉」や、国家や家族、言語を原理的に論じた「共同幻想論」「言語にとって美とはなにか」などの著作で、若者らに影響を残した。
 今年1月に肺炎で倒れ、入院していた。 」(朝日新聞デジタル、3月16日)

吉本隆明は、尊敬する評論家の一人である。秀でた人は、大きく見える。生活年齢を超えて先輩に見える。作家の大江健三郎は、私と同年であるが、私の学生時代にすでに作家であり、大先輩と思って作品を読んでいた。文芸評論家の梶木剛は、法政の学生時代から吉本隆明の『試行』に論考を発表していたので、だから、先輩かと思ったら、私より1年後の生まれだった。

吉本隆明の著作には、多くの事を学び、導かれてきた。私は、大学1年の時、『源氏物語』の読破を計画して、まず、現代語訳で粗筋を頭に入れて、原文を読む手順をとった。最初、谷崎源氏を読んだ。ところが、さっぱり入ってこない。次に与謝野源氏を読んだ。スーッと物語が入ってきた。後年、吉本隆明が与謝野源氏を褒めている文章に出合い、ホッとした経験がある。評論家は、くどくど、事こまかには書かないが、その感受性で読者を説得する。

吉本隆明朝日新聞デジタル、3月16日)