〔いきなり文庫〕

●今日の朝日新聞によると、低迷を続けている日本の出版界で、最近、〔いきなり文庫〕が広がっているという。長年、出版の世界と関係してきた私などの感覚では、雑誌→単行本→文庫、というパターンが常識であった。著者は雑誌で原稿料を取り、単行本で印税を取り、そして文庫本で印税を取る、言ってみれば、文庫は執筆の余禄のような感覚があった。一面、文庫に入るのは、内容が良いもので、私たち読者の側からすれば、安心して良書に出合える、という側面もあり、単行本より安価という点で、有難い存在でもあった。

●それが、近頃、〔いきなり文庫〕〔書下ろし文庫〕など、驚いているが、これも出版不況、電子書籍などの影響のようである。新書も文庫も、私の学生時代とは、内実が変わってきて、読者は選択の基準に出来なくなった。

■「背景には出版不況が影響している。出版ニュースの清田義昭代表は「単行本に比べ、文庫本は安く作れるメリットがある。さらに、書店のスペースを確保しやすいメリットもある」と分析する。
出版科学研究所によると、文庫、単行本、新書を含む書籍の推定販売金額は1996年の1兆931億円をピークにほぼ毎年減少を続け、10年は8212億円。一方、文庫の推定販売金額は、96年に1355億円だったのが、10年は1309億円で、落ち込み幅は小さい。」 (朝日新聞、3月13日)

朝日新聞、3月13日、山田優氏のレポート