研究 継続の力

●昨日、東京学芸大学の近世文学研究「叢」の会から『叢 草双紙の翻刻と研究 第33号』を拝受した。B5判・258頁の大冊である。黄表紙・黒本・青本・合巻、草双紙の作品を翻刻し、挿絵も影印で掲出し、書誌を記し、作品の典拠、特色などを考察する。今度の、第33号にも9名の研究者の論考と作品研究が収録されている。

●第33号というと、年1冊の発行とすると、33年間継続された研究誌であり、33年間の研究の成果ということになる。私は、随分前になるが、日本近世文学会の大会で、この研究誌に出合った。500円か300円か忘れたが、購入した。私の専攻は近世初期の仮名草子であり、草双紙は近世後期、しかし、膨大な草双紙の作品群に立ち向かって、1作1作、文字に定着し、分析を加える、その研究姿勢に感動して購入した。それが機縁となって、小池正胤氏を中心とする、この研究会から、この研究成果を御恵与賜っている。

●これだけの大冊を継続刊行することは、研究成果も無ければならず、刊行費用の準備もしなければならない。長い年月の間には、送料だけでもカンパして下さい、と要請されたこともある。今度の、第33号には、

「本書は、平成23年度 科学研究費補助金 基盤研究(C)(一般)「近世中期子ども絵本の分析による伝承文化研究」に基づく研究成果です。」

と記されている。

横山重先生も、犬山時代の11年間に出版した古典の翻刻は、再刊21点、新刊9点、計30点、新刊の内7点は文部省の助成出版であった。古典の翻刻を軽視する傾向もあるが、それは皮相的な考えである。古典の定着は文学研究の根底である。横山先生は「正しい本文以前に正しい研究なし」と申された。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/kanabun/news2.html

■『叢 草双紙の翻刻と研究 第33号』