初笑い

●ポストを見たら、新聞と共に、若宮貞次先生の編集兼発行する、短歌雑誌『あかね』第28巻 第1号が届いていた。平成24年1月1日発行である。巻頭の「作品集(その1)」に、若宮貞次(東京)の歌が出ている。

おとろふる足にて屋根にのぼりゆく二連梯子はふらふらふらふら
のぼり来し二連梯子の揺れ揺れに移らむとする屋根に移れず
梯子より見えたる瓦いちめんにへばり付きたるかびと青苔
オーブンのなかにて爆ぜるぎんなんの五つの粒の連発の音
いさぎよき音して爆ぜしぎんなんを紙袋よりとり出して食す
老の身の薬とならむ朝夕にぎんなんを煎る五六粒ほど

●私は、この若宮先生の歌を読んで、思わず、大笑いした。今年の初笑いである。先生は、今年、86歳になる。巻末の「編集所便」では、
「△高齢になり歌作できなくなったと嘆く声を聞きます。編集子は八十六歳となります。若い頃より、しぜんに、楽に作れるようになりました。これは、冊子編集のおかげで、毎日みなさんの歌を繰り返し、繰り返し、丁寧に読んでいるからだと思います。・・・」

●この短歌雑誌『あかね』の活動の基本は、
 万葉の歌を尊び
 子規以来の写実の歌
 生活に即した真情の歌
 重厚にして清新な歌をめざす
である。若宮先生は、1947年、山梨師範学校を卒業と同時に「アララギ」に入会、歌の道を歩んでこられた。65年の歌歴である。
●この歌人の、老境のあふれる歌に、大笑いして、平成24年、2012年の新年を迎えた。やがて、山梨・甲府出身の、昭和女子大学名誉教授・保坂みやこ先生の晩年を想起して、しんみりとした数刻を過ごした。

若宮貞次 → http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%E3%B5%DC%C4%E7%BC%A1?kid=347078

■■謹賀新年■■

■短歌雑誌『あかね』第28巻 第1号