司 修 氏  第38回 大佛次郎賞 受賞

司修氏の『本の魔法』(2011年6月15日、白水社発行)が、第38回大佛次郎賞を受賞した。司修氏は、1936年生まれの、装幀家・画家・作家である。大佛次郎賞は優れた散文作品に贈られる。私は、もう何十年も前に、ある大学の教授の評論集を、この賞に推薦したことがある。残念ながら受賞は叶わなかった。

●実は、文藝春秋で『旗本夫人・・・』を出した時、お世話になった和賀正樹氏が『熊野・被差別ブルース』(2010年6月10日、現代書館発行)を出した。見たら、装丁:司修、とある。司修氏は画家であり、本の装丁者として有名になっていたが、小説も書かれていた。

●司氏が小説を出された時に、私は驚いた。そして、和賀氏の著書の装丁をされているので、また、驚いた。さらに、『法政文芸』の装丁もされていて、またまた、驚いた。

●今度、大佛次郎賞を受賞された『本の魔法』には、

「生きるためになんとかしなければと走り回る毎日を送っていたぼくは、日本橋牡蠣殻町にあった桃源社という出版社へ、月に一度、本の装幀となる写真や絵を届け、使われるとその一月が食えるような生活をしていた。」(225頁)

とあり、「あとがき」には、

「・・・桃源社という小さな出版社から、装幀のための絵を買ってもらえるようになり、飯を食いつないだのだった。その一冊が水上勉の『比良の満月』であり、桃源社の編集者で、装幀者でもあった方から、装幀の奥義を無言で教えられた。彼のの装幀した『黒魔術の手帖』『毒薬の手帖』(渋澤龍彦著)は今も撫でさすったり、匂いを嗅いだりしている。」

と書いている。

●実は、この頃、私は、大学卒業直後、腰掛でここの編集部にお世話になっていて、司修氏を何度も見ている。司氏が、装幀の奥義を無言で教えられた編集者で装幀者、というのは、多分、その頃の編集長のM氏だろうと思う。このM氏には、私も大変御世話になった。だから、今回の司修氏の大佛次郎賞受賞には、驚いたのである。

司修氏の『本の魔法』

■和賀正樹氏の『熊野・被差別ブルース』  装丁 司修