グーテンベルク『42行聖書』の伝来

上原作和氏の追跡によって明らかにされた、大島本『源氏物語』は、明治23年の秋、佐渡に渡り、昭和8年頃に佐渡から東京に帰ったという。この時、所蔵者の田中家は、この『源氏物語』を1万円で購入して欲しいと言ったという。大変な高額である。

●1455年頃、世界で最初に活字印刷された、グーテンベルクの42行聖書の1本は、大変な経路を経て、1987年(昭和62年)10月22日、日本に伝来した。丸善株式会社がドヒニー記念図書館から購入したのである。丸善は、5390000ドルで購入した。当時のレートで約7億8000万円である。

●私は、当時、昭和女子大学で出版文化史を講義していたので、特別に閲覧・写真撮影願を提出して、それを教材に利用させてもらったことがある。昭和女子大学図書館には、プロイセン文化財図書館所蔵本の覆刻本が所蔵されていて、表紙は、ヘッセン州立図書館所蔵のフルダ表紙て、見事な42行聖書であったが、丸善のオリジナルに接した時の感動は忘れられない。印刷時の見当の針穴まで確認できた。この丸善本は、現在は、慶應義塾大学図書館に所蔵されていると思う。

■1989年(平成元年)9月、丸善日本橋店にて展示された、
 グーテンベルク42行聖書、ニコン