ドナルド・キーン コレクション 北区立図書館へ

朝日新聞によると、コロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン氏(89歳)が、御自分の蔵書、600冊などを、東京都北区立中央図書館に寄贈されたという。蔵書には、キーン氏の英語の書き込みがあるという。図書館では、来年度中に特別コレクションコーナーを設けて公開の予定らしい。1922年ニューヨークに生まれ、戦後、京都大学などで日本文学を学び、多くの著書を出版されたキーン氏の使用した蔵書は興味がある。チャンスがあれば、閲覧させて貰いたいと思う。

●私は、昭和53年〜56年に『井関隆子日記』全3巻を勉誠社から出した。しかし、この無名の人物の日記は、ごく少数の方にしか認めてもらえず、これは単なる歴史資料であると発言した御仁もあった。そんな状況の時、勉誠社の編集者から電話があり、先生、朝日新聞が日記を購入しました、と言う。昭和59年4月4日・5日・6日の朝日新聞に、キーン氏は「百代の過客―日記にみる日本人―」で3日間に亙って『井関隆子日記』を採り上げてくれた。これは嬉しかった。以後、日本人の研究者も少しずつ評価してくれるようになった。

●キーン氏の『百代の過客 日記にみる日本人』は、朝日選書に全4冊として刊行され(1984年4月)、12月には、特製本2冊が出た。12月30日には、その出版記念会があり、私も出席した。宇野千代大岡信加藤周一佐伯彰一井上靖山本健吉遠藤周作北杜夫安岡章太郎草野心平・・・、など錚々たる日本文壇の方々がおられた。私は、小西甚一氏などの国文学関係者やキーン氏の教え子の方たちと歓談していた。今は、良い思い出である。

●その後、『井関隆子の研究』(2004年和泉書院発行)や『旗本夫人がみた江戸のたそがれ』(2007年文春新書)もキーン氏には差し上げているが、これらは、600冊には入らないだろう。

朝日新聞 10月28日