秋山虔先生の最新刊 2点

秋山虔先生の最新刊、『源氏物語の論 AKIYAMA KEN Selection』・『平安文学の論 AKIYAMA KEN Selection』2冊が、8月10日、笠間書院から同時発売された。『源氏物語の論』396頁、『平安文学の論』464頁、という大著である。各冊に掲載された書評のリストを拝見して、圧倒された。私は、まず、「源氏物語現代語訳の方法」を拝読した。法政大学での秋山先生の御講義が、昨日の事のように甦る。

●学部の頃、先生の源氏を履修させて頂き、毎週、毎週、先生の教室に出るのが楽しみでならなかった。卒業後も聴講願を出して受講させて頂いた。教室は女子学生で一杯だった。私は、毎時間、一番前の席で、秋山先生の講義を拝聴した。とにかくノートをとった。ある時、先生が講義を始める前に、先週、どこまで話しましたか、と私のノートを覗きこまれた。雑記帳にまずい字で書かれたノートを御覧になって、先生は、理解できなかった様子であり、清書した正規のノートを持参すべきだったと、後で悔やんだことが忘れられない。

●私は、法政大学へ入学して、入学式の時、大内兵衛総長が祝辞の中で、諸君、入学おめでとう、・・・君たちが卒業するまでに、マルクスの『資本論』を読破したならば、実りは多いだろう、と申された。真面目な私は、履修の手続きが済むと、資本論研究会へ入って先輩の指導の下に『資本論』を読み始めた。予習してみたが難しい。メンバーは経済・法学の学生のみで、日本文学科は私1人だった。3ヶ月ほどして退会した。

●日本文学における「資本論」は何か。『源氏物語』ではないか。机の前に年立と人間関係図を貼って、まず、現代語訳を読んで、その巻の粗筋を頭に入れて、池田亀鑑校註の朝日古典全書で読み始めた。最初は1頁読むのに2時間も3時間もかかった。しかし、少しずつ、頭注を見ることが少なくなり、作品の世界に入れるようになった。

●現代語訳は、まず、谷崎源氏にした。しかし、どうも、しっくりしない。そこで、与謝野源氏に変更してみた。私は、その素晴らしさに驚愕した。源氏の不足気味の部分を補って理解を助けてくれたこともある。これは、1読者としての感想に過ぎないが、吉本隆明も、与謝野源氏がいいと言っているし、心から尊敬する秋山先生も、与謝野源氏を評価しておられるので、私は、学生時代の選択に満足している。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm 

■『源氏物語の論 AKIYAMA KEN Selection』
 『平安文学の論 AKIYAMA KEN Selection』