平成23年度京都府公立高校入学者選抜学力検査に『可笑記』出題

●平成23年度京都府公立高等学校入学者選抜のための学力検査に『可笑記』が出題された。問題は、巻2の26段。<各教科の特色と傾向>の【国語】では、次のようにある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 古文では、近世の文章を題材とし、内容を読み取る力をみるとともに、歴史的仮名遣いなどについて問い、古典を理解する基礎が身に付いているかどうかをみた。
〔出典〕 「可笑記(かしょうき)」(「近代日本文学大系 第一巻」国民図書株式会社 より)
 如儡子(にょらいし)による、江戸時代初期の仮名草子。随筆風の形式をとっている。
 問題文は、人の口を出入りする「よきもの」「いたづらもの」と、それらの出入りに際しての態度について述べた文章である。自分自身の言動にも結びつく内容を読み取る中で、考えを深め、古典に親しむ態度が養われていくことを期待する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
仮名草子の『可笑記』が、京都府の公立高校の入試に出題されたか・・・。長年この作品を研究してきた私としては感慨深いものがある。近世初期の仮名草子作品は、仮名遣いなど、混乱期であり、その辺りは、問題作成の時に修正している。ただ、テキストに、昭和3年発行の『近代日本文学大系・第1巻・仮名草子集』を使用している点は、少々、気になった。2、3、例を挙げると、

○おもしろきを作りなどは → おもしろきをつくるなとは
○あるひはきかつににおよんで → 或はうへかつゑにおよんで
○おのれおのれが心に御座候間 → をのれをのれか心にて候間

●信頼すべきテキストによれば、→の右のような文になる。仮名草子作品『可笑記』から出題して下さったことには感謝するが、昭和3年から80年余が過ぎて、仮名草子研究も進んでいる。この辺りのことも、問題作成に当っては考慮して頂きたいと願う。

■平成23年度京都府公立高校入学者選抜学力検査



寛永19年版11行本 桜山文庫


■無刊記本 長澤規矩也先生旧蔵本

■万治2年絵入本 横山重先生旧蔵本


可笑記評判 深沢本