精衛海を塡む

●今日、7月1日、私は、5月・6月と、2ヶ月間かけて取り組んでいた、如儡子百人一首注釈の研究の初校をようやく終えて、出版社へ返送した。老人にはシンドイ作業であった。研究篇・翻刻篇合わせて350頁余である。

■「おろか心の、うつり行くにまかせて、此の和歌集の、その趣きを綴り、しかうして、短き筆に書きけがらはし留めり。誠に、精衛海を塡めんとするに異ならずや。」

如儡子は、この大著の奥書にこのように書いて、精衛に自注を付けて「精衛といふ鳥、草木の枝葉などをもつて、大海をうめんとするなり。誰々も知り給へる故事なれば、書き付くるに及ばず。」と記している。

●この中国故事は、『山海経、北山経』が出典である。「精衛」は想像上の小鳥。炎帝の娘が東海でおぼれて精衛という小鳥に化したという。白いくちばしと赤い足の鳥で、常に西山の木石をくわえて、東海を埋めようとしたけれど、果たせなかったという。不可能な事を計画して、結局徒労に終わることのたとえ。

如儡子・斎藤親盛の計画した、「百人一首」を近世初期の庶民に、分かりやすく伝える、という計画は、結果的に徒労に終わってしまったのであろうか。その評価は、これから、多くの研究者によってなされるものと思う。

■「精衛塡海」 冨樫省艸 刻
陰刻方形 30ミリ×30ミリ

陽刻方形 30ミリ×30ミリ

陽刻方形 30ミリ×30ミリ

陽刻方形 20ミリ×20ミリ

陽刻方形 22ミリ×22ミリ

①陰刻方形 18ミリ×18ミリ
②陽刻方形 15ミリ×15ミリ