京大入試問題の分析と解説

●今年、2月25日実施の、京都大学入試に『井関隆子日記』が出題されたことは菊池先生から知らされた。その後、この問題に関して、進研ゼミの「分析と対策」もネット上に公表され、昨日は、広島の高校の中村先生の「古文問題分析(中村)京都大文系」を拝見することが出来た。このように、多くの方々に分析され、批評されて、隆子も喜んでいるものと思う。

●中村氏は、
「『井関隆子日記』は江戸時代の旗本の夫人の日記。時代は江戸幕末の天保年間。過去の出題は見たことがない。この日記をネタにして書かれたのが『旗本夫人が見た江戸のたそがれ―井関隆子のエスプリ日記』(文春新書)である。」
と書いておられる。氏は大学入試センター試験明治大学の入試も御覧になってはいないようである。

京都大学の入試に出題されたのは、天保11年5月26日の条である。隆子の実家は四谷であるが、彼女が井関家に嫁いだ後、実家の庄田家を継いだ甥の安玄の身持ちが悪く、築地の庄田本家に預けられ、四谷の家は留守番の翁が管理していて、すっかり荒廃していた。そんな時に、隆子は実家を訪れ、その様子を日記に綴っている。不通の人間ならば、落ち込んでしまう場面であろう。泣き言の1つも言いたくなる。しかし、隆子は、ただ感傷に走ることなく、悲しみに埋没してもいない。滅び行く世のはかなさ、人間の存在の哀れさ、その様を見事な文章で定着している。これは、そうそう、出来る事ではない。ここに、彼女の、並ではない資質をみることができるし、この日記の文学的価値がある。

■「古文問題分析(中村)京都大文系」