労作 『江戸時代初期出版年表』 発刊

●『江戸時代初期出版年表〔天正19年〜明暦4年〕』が発行された。岡雅彦・市古夏生・大橋正叔・岡本勝・落合博志・雲英末雄・鈴木俊幸・堀川貴司・柳沢昌紀・和田恭幸の各氏の共同研究の成果である。2011年2月28日、勉誠出版発行、A4判、476頁、口絵・32頁、定価 25000円+税。

●岡雅彦氏の「あとがき」によれば、本目録の作成を計画したのは、15年も前になるという。当初、21名の研究組織で4年間活動し、ここで、海外の資料の調査も進め、その成果をベースに10名の編者が継続調査され、この、画期的な目録刊行へとこぎつけた、という。この、経緯を伺うだけでも、この種の調査の困難さを思わずにいられない。

●特に、今回の目録は、その調査対象が、日本国内に止まらず、外国の図書館のものにまで及んでいる点に、これまでの目録と異なるところがある。国の研究機関として、国文学研究資料館が創設され、国文学の研究調査対象も国際化した結果であろう。私の経験では、簡単に外国へ行くこともならず、郵便で情報を集めたり、たまたま、外国留学や研修などで行かれた方に教えてもらう程度だった。このような、海外の貴重な資料を調査し、多数組み込むことで、従来の目録では得られない説得力を備えた目録になったのだと思う。

●日本の出版は、百万塔陀羅尼経、摺経、摺仏、春日版、高野版、五山版、古活字版、切支丹版、慶長勅版、伏見版、天海版など、最初は出版社というよりも、政治や宗教などとの関連で発展してきた。この度の目録を拝見しても、その姿がよく見てとれる。特に、近世の出版の成立を考える上で、この目録は、確たる証拠を示してくれた、という点で大きな研究成果だと思われる。この調査に関与された、21名の研究者と10名の編者に対して、心から感謝申し上げる。ただ、この編者の中の、岡本勝氏と雲英末雄氏が、この大労作の完成を待たずに御他界されたことが、残念でならない。

★本書の詳細→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■『江戸時代初期出版年表〔天正19年〜明暦4年〕』

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